(新しい)置き場

ごそごそしています

囲め!文字フレーム

 気になる文字列

つい文字を目で追ってしまう習性があるのだが、郵便受けに投げ込まれたチラシに対してもそれは適用される。

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今のところゴミ屋敷も遺品整理も予定がないので大部分は私に無縁の記号として流れ去ってゆくのだけど、
ここに気になる文字列がある。

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ぐるっと囲む、地名の文字フレームだ。

文字フレームには東京の23区と市町村部、そして神奈川の地名などがばらばらと登場している。そして自動的に、このチラシのサービス対象地域なんだな、と思う。


思うけど、本当にそう?
どこにそう書いてある?
にぎやかしとしてなんとなく「ここらへんの地名」を並べただけかもよ?

 

と疑ってしまったので、疑いを晴らすために地図にチェックを入れてみた。

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埼玉、一か所のみ。

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こちら東京都。

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そして神奈川。3都県の組み立ては各自の心でおねがいします

おお、だいたいまとまって位置しているな。ということは好き勝手に地名をばらばらと載せているというわけじゃなさそうだ。疑ってごめんな。

文字フレームは、そのチラシの対象範囲を表している
 

贔屓の地名

後日、べつのチラシが入っていたので見比べてみる。

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ホリデーシーズンらしさあふれる電飾つきの「不」。

どちらも、ゴシック体だ。
そして左上は世田谷。下北沢や成城、三軒茶屋などを擁する地へのあこがれが期せずして共鳴したかたちだ。
しかし緑のチラシは「区」まで含め、黄色のチラシでは「区」は省いている。これが解釈違いというやつだな。

ゴシック体で書かれている
左上は世田谷から始まる
 

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黄色のほうは区部と市部、さらには神奈川もごちゃまぜに登場する。
いっぽう緑のほうは区部と市部を順に配置しているようだけど、調布や狛江の「市」は省略されている。
これは元狛江市民としてはゆゆしき事態だけれども黙認しましょう、都内でいちばん小さい市ですが元狛江市民の心は広いのです。

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緑のほう、「川崎市」をいれつつその構成要素である「多摩区」や「高津区」を含めていて、ちょっと水増し疑惑があるが元麻生区民としては許容範囲です。
なお麻生区は「あそうく」ではなく「あさおく」と読むよ!

なじみの地名は、贔屓したくなる。
 

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黄色のチラシは右下に「地域」「全域」。緑のチラシは「その他地区」。どちらも左上からスタートして徐々に息切れし、右下にたどり着くころにはかなり出し切った感がある。というか緑のほうは完走できずに不自然なスペースができちゃってるけれど、全力疾走に敬意を表して不問とします。 

違いを可視化する

もちろんそれぞれの守備範囲も比べておきたいですよね。ご用意してありますよふふふ。

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緑には埼玉が登場しなかったので東京・神奈川のみでお送りします

黄色チラシと緑チラシ、それぞれの得意エリアがよくわかります。しかし神奈川県って犬っぽい形ですよね。箱根駅伝中継では沿道のわんこのはしゃぎっぷりを見るのが好きです。

あっ、地名の出現数も見ておきます? (いそいそと取り出す) 

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東京だけでごめんね

黄色いチラシの、港区への羨望のまなざしが強すぎてびっくりした。
そして緑のチラシの、各地域への公平性。気配り上手さんはどこへ行っても愛されるよ!いつ転職しても大丈夫!私もそういう人になりたい!

 

ではここまでのまとめです。

文字フレームの特徴
・対象の範囲を表している
・ゴシック体
・左上は世田谷から始まる
・なじみの地名は贔屓したくなる

これで文字フレームを完全に理解しました。
続いてアウトプットです。

 


文字フレームで飾る:手持ち画像編

まずは手持ちの画像でやってみましょう。

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『見てるぞ!23区ぜんぶ!』
間違いなく23区全域が見張られていますね。フレームの地名が団結して効力を発揮し、写真の中の杉並を無力化。有無を言わせぬ強さを感じます。 

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『北海道産のキュウリは23区全域で熱狂的な歓迎を受けます』
ちなみに「北」が3回、「港」が2回登場しているのは一文字でスペース調整にちょうどよかったから。黄色いチラシで港区を多用した製作者と心が通じ合った瞬間です。

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『23区全域を駆け巡る小田急線。』
実際の小田急線は東京の一部を通るだけですが、こうしてみるとどうでしょう、実に頼もしく思えますね。
わたし20年ほど小田急線のヘビーユーザーだったので、こんな立派な姿を見ることができて感無量です。私の手を離れた今も成長を続ける小田急線にみなさま引き続きご期待ください!!

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『この地では幅広い年代の地層が見られ、全世界の地質学者が注目しています。』
ウィキペディアさん協力のもと、地層年代を並べてみました。ジュラ紀白亜紀以外はほぼ初見ですがチバニアンは新しく話題だったので2回使いました。
高校時代の理科は地学クラスだったんだけどな、何にも覚えてないな。クラスメートだったK子と年賀状のやりとりが続いているだけだ。 

 

勢いがついてきたので師走の街に駆け出します。


作ろう文字フレーム

心のおもむくままに並べ、印刷したものを

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こうして

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こうですね。

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どうでしょう。

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『今日の占い!全星座ラッキーモスはホットドッグ!前はプレーンドッグっていう名前だったよ!』

私の左手のがんばりをご堪能ください。緊張感ありますね。

コピー用紙じゃうまく形を保てず、何度も撮りなおし。
刻一刻と冷めていくポテト、コーヒー、ホットドッグ。
その時あたし閃いたのだ。

さっきの文房具屋さんで透明なカードケースを買って、それに入れて撮ればいいのでは?!

冷めきる前のホットドッグをもぐもぐし、私はわくわくと席を立った。

 


すてきな文房具屋さんを紹介します

さっきの、といいましたが初登場です。ちょっと回想シーンいれますね。


じつは「外で作業しよう!」と家を飛び出してきたけれど、カッターを忘れたのだった。

コンビニでは440円。家に帰ればあるものを500円近く出して買うのも悔しいなぁ、どうしよう…。そうだそうだ、あの文房具屋さんがあるじゃん!

と思い出したのが、中野駅前にある文房具屋さん。

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いま全員ひとめぼれしたでしょ

ときどき前を通って気になっていたのだけど、ふらりと目的なしには入れない雰囲気なんですよね。中のようすも簡単にはうかがえないし、なにか用があれば胸を張って入れるのだけど…と思いつづけて幾星霜。

今こそ!時はきた!!カッターを求めていざゆかん!!(響くホラ貝)

と飛び込んだら、果せるかな、120円だし何色もある!やったね!

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と手に入れたカッターがこちら。どうですかこの値札シールの醸し出す「まちの文房具屋さん」感。レシートいらないですって断っちゃったけど、きっと少しサイズの小さい、目の粗い用紙に紫色で印字されて裏からちょっと文字が透けるタイプだ。もらえばよかった~

で、ごきげんで作業して、あーやっぱり紙一枚じゃ形が崩れちゃうな…となったときに、「さっきの文房具屋さんで透明なカードケースを買って、それに入れて撮ればいいのでは?!」とひらめいたわけです。
回想おわり。

下敷きの季節

ということで、ふたたび。

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さっきよりちょっと近づいた写真をどうぞ

ね、あらためて素敵でしょ?

ちょっと反応のにぶい自動ドアをはげまして入店。
店内には、文字通りところせましと文房具、そしてゴムボールや折り紙といった質素なおもちゃが並べられている。
なにがどこにあるかの案内表示なんかない。
POPは印刷と手書きとごちゃまぜ。
流通用の箱のまま陳列されてる品物もある。
通路はせまくてひととすれ違えない。

けど、

いろんな紙やインクやゴムや空調のにおいがまざっていて、興奮したわたしの鼻息は荒くなってしまった。おかげでマスクが鼻に吸いついた。むかし地元で通っていた本屋さんの、文房具コーナーのにおいだ。

いかん、今はカードケース購入というミッションがあるのだ。うっとり滞在したい衝動をぐっとこらえ、見つけた透明の板状のものを棚から引っ張り出したらそれはカードケースではなくて透明な下敷きだった。


透明な!
下敷き!

 

突如、記憶の風が吹き荒れた。
中学生のころクラスで、マンガの上に透明な下敷きを重ね、好きなキャラクターをサインペンで写し取って楽しむという文化があった。
それは自分が誰が好きなのか、今でいう「推し」を表明する手段だったのだ。
そのためによく地元駅前の有隣堂で下敷きを買い求めたな。わたしの90's、シティーハンター幽遊白書の季節。

その少しあとには、A4サイズのカードケースに音楽雑誌から切り抜いたミュージシャンの写真を入れて下敷き代わりにする時代が来るんだよな…

はっ、このままでは私、思い出の竜巻でふき飛ばされてこなごなになって、文房具屋さんのチリとして降りつもってしまいそう。それも幸せかもだけど!
あわてて下敷きを購入してお店を後にした。レシートはまたもらいそこねてしまった。


モバイル文字フレームができました

というわけで、

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A4サイズは思い出刺激が強かったのでB5サイズを購入

さっき切ったフレームを載せて…

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完成!モバイル文字フレーム!

カードケースじゃなくても静電気でくっつくから平気でしょ…という予想ははずれ、下敷きの上をつるつるすべってしまう文字フレーム。私の手も乾燥しきっていて全然くっつかない。その上、下敷きは中野の冬の空を映し込んでしまう。
日がかげって、風の冷たさが増した気がした。とつぜん心細くなった。2020年はあと数日で終わろうとしているのに、私いまなにを…?

 

…いいよ、大丈夫!

私は私にむかって、はっきりと宣言した。
「透明な下敷き」というアイテムがとてもいとおしく思えてしまったから。添い遂げようじゃないか。大丈夫、これでいきます。


文字フレームで囲む:フィールドワーク編

さっそく、モバイル文字フレームを使ってそばを流れる小川の注意書きを見てみましょう。
カッパが「みずのなかにははいらないでね」とほほ笑んでいますが…

出でよカッパ!!

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 …出ませんね。
トリミングしたらどうだろう。

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 あっ、ちょっと見えましたね、23区に出没するカッパの姿!
『23区内でも油断するとカッパに尻子玉抜かれるよ、つねにキュウリを携帯しておこうね!』
という注意喚起に、いま完全に見えました!!ね!!!

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これだけあればカッパ大量出没でも安心だ!!(さきほどのキュウリ画像の最適な使いどころが突然やってきたので驚いています)

年末の街を切り取る

満を持して年の瀬のまちなかへ。

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午後の日差しを浴びる下敷き。あいかわらず静電気は起きず、風にもあおられ、結局わたしの左手ががんばる。新年を数日後にひかえ、どこかのどかな中野駅前からお送りしております。

トリミングしてみたら…

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『この道は23区縦断道路。都内のすべての道は中野に通ず。』
心の目と優しさでみれば、そう見えるはずです。見えます!見えました!!

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『今日の占い!全星座ラッキー銅像は犬!!』
左上が双子座なのはもちろん私が双子座だからです。

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『23区全域を駆け巡る東西線。』

しかし思ってたより難しいな。
お気づきのように、ピンぼけと映り込みが深刻なのだ。 


 

下敷きにいろいろ映り込んじゃうし、文字が景色か、どっちかにピントがあうとどっちかはボケちゃう。普段iPhoneのカメラの設定なんて触らないから対処法はわからず。写ルンですをこんなに恋しいと思ったことはなかったな。90's、女子高生が写ルンですを他校バッグに忍ばせていた季節。

…いいよ、大丈夫!

私は私にむかって、きっぱりと宣言した。
「透明な下敷き」というアイテムを正解とするために、私がしっかりしなくちゃいけない。自分で選んだ道ですもの、自分で間違いでないようにしなくちゃ。森本薫『女の一生』より。

見せてやるぜ、あたしのフレーミング力(りょく)を!!

 

ピンぼけは神秘、映り込みは風情

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『この砂場では幅広い年代の地層が見られ、全世界の地質学者が注目しています。』
時空ににじむような砂場の姿、逆にますます神秘的ですね。
空にかかる電線と鳥が映り込んでいて、季節を織り込む俳句のようです。これぞ風情。

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『このポストに投函すれば23区どこにでも配達されるという。』
幻のようにぼんやりと写るこのポスト、実在するのかしないのか。23区のどこから投函しても23区のどこへでも配達されるという。もしかしたらあなたの街にも出現するかもしれない…

 

ありがとう郵便やさん!!

 

おしまい

  

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20'sの推し表明手段。(著者近影)

 

 


 <ありがとうありがとう>

本文中の白地図「白地図専門店」さんのものを使用しました。

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