(新しい)置き場

ごそごそしています

北海道博物館の年パスを買った

 

北海道に移住しまして

 

ご挨拶として
北海道博物館に行ったのだった。

挨拶と言っても知り合いが勤めているわけではなく
完全に気持ちの問題。

 

「あんまり北海道サンのこと知らないまま
ただ好きというだけで移住してきてしまいましたが
これから精一杯がんばりますので
皆様どうぞよろしくお願いいたします!」

という、着任の挨拶みたいな感じ。伝われ。

 

関東で長く暮らしていた私は
北海道には旅行でくるくらいで
しかもそれは限られた地域で、短時間で

あまりにも知らなすぎるのだ、
北海道のことを。

だからこれからは知っていくぞ!という気持ちが
わたしを北海道博物館に向かわせたのである。

 

 

 

 

ともあれ、こうして北海道博物館前のバス停に降り立ったのだが

あまりにも博物館である

まぁデカい。デカいよ。
さすが北海道。でっかいどう。

 

茶色い煉瓦のザ・博物館という佇まいに高揚しながら入館。

 

チケット売場でさっそく年間パスポートを購入する。

 

いきなり年パス

たいした下調べもしないまま訪れた、はじめての北海道博物館。
年パス買うほど、見るものあるの?

と思うなかれ。
もうこれはね、あります。あるんです。

というか、興味のある場所やテーマの博物館が近くにあるなら
年パス買ったほうがいいよ絶対。

 

これは大阪の国立民族学博物館みんぱく)や
千葉県佐倉市国立歴史民俗博物館(れきみん)や
上野の国立科学博物館(かはく)で身をもって学んだこと。

 

miyanishinoaya.hateblo.jp

 

みんぱくは大阪旅行のついでに寄った程度じゃ見きれなかった。
れきみんには2回行ったけど見きれなかった。
かはくも1回じゃ当然見きれなかった。

 

いま北海道にきて、偶然にもこの博物館に
通いやすい場所に住むことになったのだから
これはもう、通う。通います。

わたしが北海道について知らないことが多すぎるから。
それをわかっているからこそ、
年パスを買うべきなのだ。

(4月から入館料がちょっと値上がりして、年パスも値上がりするとのことで
じゃあいいタイミングだし3月の今のうちに買っちゃえ!というのも背中を押しましたよ、正直)

 

子どもの頃は「博物館」て
「薄暗い部屋に古いものがたくさん飾られていて
あんまり興味ないけど、たぶん大切なものなんだろうなぁ」

という程度の認識だった。

それが、大人になってずいぶん変ったわね私。

 

そんなわけで年パスを手にし
鼻息荒く展示室へ入室

 

いきなり2体の恐竜の化石が迎えてくれたり
北海道という大地の成り立ちとか
気候変動を示す植物の化石とか
大陸との交流を表す化石とかで

まずは北海道のスケール感と、長い長い歴史とを実感。

 

でも知ってるの私、
ここはまだひとつめのテーマ展示室。
チケット売場でもらった館内案内には
展示室は5つあると書かれている。

すべての展示をこのペースで
じっくりゆっくり、隅から隅まで
時間をかけて見ていたら
たぶん日が暮れる。
なんなら春が来る。季節が巡る。

 

そう、ここで活きてくるのが
年パスを入手したという心の余裕である!(ドヤっ!)

 

今日のところは全体をざっと見て回るだけにして
また次に来た時にじっくり見ればいい!
そうだそうしよう!

 

第1テーマ:北海道120万年物語

という決意も揺らぐような
魅惑の展示物の数々。

 

人びとのいのり
いのり

個人的に興味のある、「いのり」に関する出土品には足が止まるし

 

民族のうごき

横向き

見慣れない向きで描かれた地図には見とれちゃうし

 

交易品

目を奪う品々

アイヌ民族から和人への交易品は自然の恵みにほれぼれするし

 

もう、沼なのである。

 

第3テーマ:北海道らしさの秘密

2階の展示室には

鍬バリエーション

鍬のバリエーション

開拓時代の鍬。
日本のあちこちで、その地の土の質に合わせて使われていた鍬。日本各地から開拓のために人々が集まったので、いまここにさまざまな形の鍬があるという。

なにそれ、そういう話めっっっちゃ好き…!!

 

大正時代の列車内

列車内

大正時代の列車内のようす。音も流れる。
雑多な雰囲気の電車の、揺れや籠った空気まで伝わってくるかのよう。

 

四季の民俗

まつりなど

暮らしに根付いた季節ごとのまつりや行事。

 

ストーブ

部屋をあたためるためのストーブ。
北海道に来てから、暖房器具の強力さに驚愕していたので
これには本当にひれ伏すしかない。
ありがとう昔の人たち、あたたかさを追求してくれたおかげで私いま快適です…!

 

鍋だって展示物

食文化に関しては

すてきなデザイン…!

使い込まれた鍋とともに


展示用に作られたんじゃなくて、本当に、本当の生活で使われていたもの。
この先も永久にこのまま残って、北海道の食生活の証人として存在し続けてほしい。

特別展:森のちゃれんが宝箱

ここまでで入館から2時間半経っている。

展示物を見て説明を読んで、理解したりできなかったりして、納得したり驚愕したり憤慨したりと頭と感情が活発に動いてそろそろ疲れてきている。

 

「第3テーマ:わたしたちの時代へ」と「第4テーマ:生き物たちの北海道」はかなり駆け足で通過し(年パスの強み)、

 

さて次は、特別展。
これは会期終了が近いので、今日見ておきたかったのだ。

 

宝箱

スタッフ一押しの収蔵資料や博物館活動を紹介する展覧会、というサブタイトル。

 

え、そんなの絶対面白いじゃん、と
どこかでポスターを目にしたのか、SNSで見たのか?

きっかけは定かではないのだが
とにかく今日ここを訪れた理由のひとつが、この企画展だった。

 

第21回企画テーマ展「森のちゃれんが宝箱 -スタッフ一押しの収蔵資料や博物館活動を紹介する展覧会、いや、展乱会!?-」 – 北海道博物館

※この企画展示は4月7日まで

 

ひろびろ~

いままで見てきた総合展とはうってかわって、展示物の数は少なめ。
じゃっかん寂し気にも見えるこのガラスケースに
実はすごい熱意が充満しているのであった。

 

国鉄の点検ハンマー

なんかついてるな

博物館の展示品ではあまり見たことのない、手書きの札がついている。
キャプションを読むと、寄贈者が書いた説明のようだ。
説明書き、よく見るとなにかの裏紙を使っているらしく、印字された文字が透けて見える。
なんだろう、そこらへんにあった新聞の折り込み広告とかに書いたのかな。
自分が仕事で長年愛用してきたもののことを、どうしても伝えたかったのだろう。
そういうことも含めて、愛おしい。

拓銀の銘板

聞いたことあるな

北海道拓殖銀行の銘板。
生活に密着していたのだろうな。
働いていた人もたくさんいただろうな。
北海道の景色のひとつだったんだろうな。

 

店先のラジコン飛行機

あの店にあったんだって

狸小路の「あの店」にあったという飛行機。
わたしはなんのことやらさっぱりわからないけれど
きっと「あ!あの店の!」と分かる人はたくさんいるのだろう。
(この記事を読んでくれた人のなかにも、そういう人がいると嬉しいな)

 

そういうものを、収蔵してくれてありがとう。

 

素敵なタイルと説明パネル(たぶん早口)

展示品だけでなく

これはいろいろなタイルが展示されているのだけれど
私が気に入ったのは展示品だけでなく、
ガラスケースの上にある説明パネルも。

 

恐らくだけど、この説明パネルも
このガラスケースを担当した学芸員さんが作ってますよね?

 

その労力というか、
「この品みて!素敵でしょ?!詳しく説明するね!!」(早口)
という熱意が伝わってきて
笑顔になってしまった。

トラバサミと説明パネル(たぶん早口)

これも

こちら、トラバサミの紹介も同様。
吹き出し型に切り抜いたり、丸く切ったり
QRコードを添えたりと
トラバサミへの愛がさく裂している。

たぶんだけど、外注じゃないでしょ。
事務室のプリンタで印刷して、ハレパネに貼って切ってるでしょ。

推しの良さを布教したい気持ちがあふれちゃっている。
もうね、こういうの大好きなの。

 

他には

 

文献目録

目録作成

こういう地道な作業が、他の人の研究を支えているのだ。

 

個人の思い出

個人的な思い出とともに

アンモナイトの展示だけど、「勤務して初めての年の資料整理で出会った化石」という、唯一無二の思い出が飾られている。

 

あの軽石

ここで遭遇するとはね

数年前(2021年だそうだ)に、南の海の火山が噴火して
そのときに出た軽石が日本の海を漂って
いろいろなところに漂着している、というニュースがあったことを
覚えている人は多いと思うのだけど

あれが、これですって。

そのことがあった直後にはよくニュースやなんかで取り上げられていたけれど
その後すっかり話題に上らなくなり

移住した北の大地で目にする日がくるとはね。
こういうものも収蔵するのか。

 

サケのぬいぐるみ

ぬい活ですね

本物のサケと同じ大きさと重さで作られたというぬいぐるみ。
精巧に、でも可愛く作られているけれど、それを持ち上げてよいというので
もちろん持ち上げた。

…お、重い!
サケってこんなに重いのか…!!

メスは約4キロ、オスは約5キロだという。
ごめんよ、しゃけまるくらいのイメージだったわ。

 

北海道日本ハムファイターズ公式オンラインストア|しゃけまる

 

他館の図録

図録がたくさん

地下にあるという図書室からは、所蔵資料の「全国の博物館が開催した展示会の図録」が紹介されていた。

中でも私が飛びついたのがこちら

いいタイトル

「The ご利益」

祈り系大好きなんですよ。

 

葛飾区郷土と天文の博物館で2023年の12月から今年の2月まで開催されていた特別展の図録だという。

東京…!
東京か…!

わたしその頃ならまだ東京にいたのに、
ぜんぜん知らなかったよ!見たかったよ!!

 

その地に住んでいる時には、
周りのこと見えてないものなのだな。

 

そうならないように、
北海道生活ではめちゃ周りを見まくって
興味のあるものや場所を見落とさないようにしたい。

 

害虫対策

最後、出口近くに
実験器具のようなものが置かれていて
これはガラスケースに入っているわけではないし
なんだろう

実験かな?

 

害虫対策か!

「!ものすごくベトベトします!」

 

そうだ。
博物館は展示するだけではなくて
それらを保存するのも重要な役割だけれど

その保存のための、地道な研究と努力。
虫から守ることって、すごくすごく大事なことのはず。

でも、そういう仕事ってあんまり表には出ない。
だけどそれは確実にあって、
絶対にないがしろにしてはいけないお仕事なんだよな。

 

そうか、今回わたしがこの企画展に興味をもったのは
「スタッフ一押しの収蔵資料や博物館活動を紹介する展覧会」、というサブタイトルだった。

 

博物館では、ほとんどのばあい
そこに展示されているものに焦点が当てられている。

でも、そこにはスタッフさんがいる。
黒子のような、プロフェッショナルなスタッフさんたち。

 

ふつう、そういうひとたちは
たぶん積極的に、あまり目立たないように活動していて、
目立たないこともそのプロフェッショナルさに含まれているようなところもある気がする(個人の感想です)。

 

でもわたしは、その人たちのことも知りたい。
どんな人たちがそこで働いていて
どんな研究をしていて
どんなことを大切にしているのか

そういうひとたちによって博物館が守られているのだということを知りたいのだ、きっと。

よかった。面白かった。来てよかった。
こういう企画って他のところでもどんどんやってほしい。
きっと見に来るひとも、作るひとも、絶対楽しい。

 

広いが、濃かった

早くも再訪を決意

で、帰宅後この記事のために
公式サイトを見ていて気づいたのだけれど

…わたしひとつ展示室を完全に飛ばしているな。
なんてことだ。気づかなかった。


でも大丈夫!(CV:吉高由里子
なぜなら私には年パスがあるから!!

もう何度でも行くぜ。待ってろ北海道博物館!!

 

www.hm.pref.hokkaido.lg.jp