四ツ谷駅でリンゴ狩り
やんごとなき飲料
おそらく高貴な方々のための飲料なのだ、これは。
四ツ谷駅。丸ノ内線と総武線の間のすき間にあるこの自販機の、下段中央。
姿勢のいい左の3本と、あちこち自由に見ている右の3本に挟まれた、慎ましくもりりしい明朝体「青森りんご ふじ」。
容量でいうと280mlの、背の低いペットボトル。
価格に注目してほしい。
170円!!
このサイズで、170円もする!
誰が!飲むの!!
って思って、はたと気づいたのだ。
そう、ここは四ツ谷駅。
すぐそばには国家レベルのやんごとなき方々を迎える迎賓館赤坂離宮があるじゃないか。
国家レベルのやんごとなき方々が電車を降りて一息つく時、ふさわしいのは170円のリンゴジュースであるべきなのだ。
私ですか?私はやんごとなくない、ふつうの人。
でもいいの、今日はヘビーな仕事をがんばったから!!
お酒を飲めない私は、ビールでもチューハイでもなく、ちょっと贅沢なリンゴジュースで私を労う。
ちょうどいい甘味と酸味は、その日の疲れやストレスを丸く包んでどこかへ押し流してくれる。はー、至福。
170円て、新宿から荻窪まで行けちゃう切符代と同じ。
新宿から荻窪までって、歩くと1時間40分かかる距離。
つまりこのリンゴジュースには1時間40分ぶんの価値があるというわけだ。
1時間40分。
1時間40分あれば、野球の試合なら4回裏くらいまで進むし、サッカーならあともう半分くらいできる。
睡眠時間を全員があと1時間40分ずつ増やせたら、世界は少し平和に近づくと思う。
そうそれが170円。
ね。
何の話でしたっけ、
そう、170円のリンゴジュース。
色違い発見
あれ、色違いのリンゴ、あるな。
燦然と輝く170円。
そりゃあ、もちろん
お買い上げですよね。だって、今日もヘビーな仕事をがんばったから。
美味しくいただく。
後を引かない上品な甘味が、おつかれ宮西野さん!と喉を滑り落ちていく。あー、いちにち長かったなぁ。
で、パッケージが似てる感じとかから、どうやら「青森りんご」を品種別にドリンクにしたシリーズらしいぞ、っていう気配に気づいたりもしてくる。
同じ色だけど違う!
右上に例のリンゴがあるな…
…あれ?
これ、赤リンゴだけどこの前飲んだのと違う!
ジョナゴールドだ!
もちろん今日だって、ヘビーな仕事をがんばったから、美味しくいただかせていただく。自分のことは自分で褒める。やんごとなくなくても、がんばっているのだ。
ひかえ目な甘さとまろやかな酸味が、がんばったね宮西野さん!と肩をもんでくれる。ふー、今日も働いたぜ。
残る3種は
JR四ツ谷駅の構内の、かなり狭い範囲で「ふじ」「トキ」「ジョナゴールド」と3種もリンゴを見つけてしまった。
チャートには6つの品種。このうち3種類は飲んだけど、「きおう」「つがる」「王林」は、知らないな…。
ていうか、こんなふうに書かれてるってことは、これ、きっと商品ラインナップだよね…?
この6種類のうちの半分をすでに私はここ・四ツ谷駅で見つけてる…
てことは、もしかして…
ここだけでコンプリート、できるな?
四ツ谷駅でリンゴ狩り、できるな!?!?
四ツ谷駅には私が普段使っている総武線と丸ノ内線のほかに、中央線と南北線もあるのだから、全部のホームと構内を巡ればきっと全種類みつかるに違いない!
こうして私はまだ見ぬ「きおう」「つがる」「王林」を四ツ谷駅で探す、リンゴ狩りの旅に出たのだった。
駅ナカ探索
まずは普段使っている総武線の、普段行かないほうを探索。
自販機発見!
む、ないね。
もうひとつ見つけた自販機は絶賛故障中だったけれど
右上に「ふじ」発見。
価格ボタンの色のせいで「あったか~い」かと一瞬思っちゃった。
でも「ふじ」はすでに収穫済みなんだよね、残念。
都会のアップルロード
中央線のホームに向かう途中で見つけたこちらでは…
「ふじ」「トキ」を発見。「ふじ」が人気No.1で「トキ」が人気No.3だそうだ(No.2は紅茶花伝)。
ちなみにこの自販機のとなりには、さっき「ジョナゴールド」を収穫した自販機が並んでいる。Googleマップで「アップルロード」と検索したら国内には青森・岩手・広島に「アップルロード」があるらしいけれど、3種のりんごが集まっているここ四ツ谷駅が四か所目のアップルロードだ。
新たに誕生したアップルロードを経てたどり着いた中央線ホームでは
「ふじ」発見。他の価格を押しのけて正しく輝く170円。
このあと中央線ホームを端から端まで歩き、その他JRの改札内をくまなく歩いたけれど、新種の発見には至らず。
そっか、中央線には意外とないんだな。じゃあ次の路線は…
とここで私、はたと気づく。
acureって、JRの自販機じゃん!!
JR以外にはこの自販機、置いてないじゃーーん!!
ってことは丸ノ内線と南北線には、あるわけないじゃーーーん!!!
(説明。アキュアというのは株式会社JR東日本ウォータービジネスの自動販売機なのだ!)
ということでね…。
このあと巡ろうと思っていた丸ノ内線と南北線には、この自販機が設置されている可能性はない。
焦り始める私。残された希望の森は、改札の外!
ほら、今回の企画は「四ツ谷駅でリンゴ狩り」だからさ、「駅ナカ」とは言ってないからさ、改札出たとこでもギリオッケーなんじゃないかなって…へへ…
発見!!(別の)
そうこうしてやってきた改札外。
3台もあるんだからここで新種みつかってくれ…!!
という願いもむなしく、
「ふじ」かぁ…。
あっ、でもちょっとまって…
165円だ!
5円お得に手に入る!!
交通系電子マネーで買うと安い自販機を四ツ谷駅改札外で見つけた!
みんなー!「今日の仕事、がんばったけど170円のリンゴジュース買うにはちょっと反省点があるな…」っていうときにはここで買おう!
という別の着地点を見つけたふりをしていますが、わかっていますよ、この旅の目的は「四ツ谷駅でリンゴ狩り」。
もう、素直にみとめます私。
四ツ谷駅でリンゴ狩り、できませんでした!!
おしまい、
とするには、くやしすぎる。
いや、他のリンゴが気になりすぎる。
美味しいから!このリンゴジュース、美味しいから!
ほかの味も飲んでみたい!!
だからもうちょっと探す!!
あらたな森へ
次に向かったのは新宿駅。
総武線ホームのいっっちばんすみっこ。リンゴあれ…リンゴあれ…と念じながら近づく。
「ふじ」「トキ」
「ジョナゴールド」。
ここも3台の自販機で3種のリンゴが収穫できるので、アップルロード認定。こうして都内で2か所目のアップルロードが発見された。けど、「きおう」「つがる」「王林」の姿はない。
ほかの自販機2台もチェックしたけれど
はい、もうみなさんも画像内から探せますよね。
「ふじ」「トキ」、「トキ」「ふじ」。
4コ置くなら4種類置いてほしい…。
というか、4コ置けるのにそれでも置かれていないなんて、「きおう」「つがる」「王林」は本当に実在するのか?とだんだん不安になってくる。
次は池袋駅。
なんで「ふじ」「ふじ」並べたの…
なかなか新種がみつからない焦りと疲れで、悲しみが倍増。
そんな私の前に立ちはだかったのが、
ネタばれ広告!!
そっかそっか、「王林」は存在するんだ!!
そっか…。
「王林」は実在するよ、と教えてくれたこの広告に、私は感謝よりも挫折を覚えた。
いや、あるかどうかもわからない果実を求めて森をさまようのはたしかに心折れるよ、折れるけど…広告よりも先に、実物と出会いたかったな…。
でも「王林」は実在するって、それがわかっただけでも収穫だったと思おう(リンゴだけに!)、なかなかみつからない「きおう」「つがる」「王林」のうち、「王林」だけは希望が見えたじゃん!
って自分を励ましたけれど、疲れと喜びと呆れと悲しみと空腹とがざばざばと混ざってよくわからなくなってしまったのでこの後は家に帰ってたくさん寝た。
衝撃のネット記事
わたしこのちょっと高価なリンゴジュースは「隠れた名品」だと勝手に思っていた。
だから所々でばーんと広告が出ているのをみて、「あれ、なんか『売ろうとしている』な…」って、うすうす感づいてはいたのだ。
これは早いうちに記事にしないと、広告に影響を受けて書き始めたって思われちゃう、そしたらくやしいよね、私はもっと前からこのジュースが好きなのよ…なんて思いながらも、いや、もうちょっと探せば「王林」も、他のリンゴも見つかるんじゃないかって、うろうろしていたの。
だからネットでこの記事タイトルと画像を目にした時には、
「終わった…」と思った。
↓これはスクリーンショットなので、クリックしても記事にはリンクしません↓
もうね、遠目からでもわかるでしょ、この自販機に何が入っているのか。
上野か、そうか上野かぁ…
あの時私が四ツ谷をあきらめて向かった先が、新宿でも池袋でもなく、上野だったらなぁ…。
私も見つけられたのかなぁ…
見つけられたんだろうなぁ…
ああ…
くやしい…
くやしくて、記事は読まずにスクショだけ撮っていったん閉じた。
すぐに読んだら負けだ、という謎の競争心があった。
(すでに負けているのは重々承知している!けど!!)
悔しい…
わたしが自分で見つけたかった!!
~いったんフテ寝します~
~おはようございます~
では、素直に白旗を挙げてさきほどのロケットニュース24さんの記事を見てみましょう。
↓これは元記事にリンクしてます。↓
…ん?
あれ?あれれ?
上の記事をお読みになったみなさんも、あれれと思いましたよね?
「王林」、なくない??
新種情報
この記事と写真を目にしたとき、「りんごジュースだけの自販機」ではシリーズ全種類が売られているのだろうって、思いました。
四ツ谷・新宿・池袋を巡った私の努力が一瞬で無に帰すような、楽園の果実を集結させた自販機なんだろうな・って…
思ったのですが。
ないね、「王林」。
その代わりに「世界一」とか自分で言っちゃってる、300円の飲料が。
300円って、新宿駅から武蔵境駅まで(あと10円足せば)行ける金額。徒歩だと3時間10分かかるよ、3時間10分だと野球の試合終わってあわよくばヒーローインタビューくらいまで含まれる。そうそれが300円。もうなんか、ジュース代を時間に換算するの、自分でもよくわからなくなってきちゃった。ほんと、ごめんなさいね。
降参。公式サイト見る!
なんなの…
スペシャルな自販機でもぜんぶ収穫できない青森りんごシリーズ、なんなの…!!
愛憎入り混じった感情を抱きながら最終的には公式サイトによろよろと行き着いたわけだけど、
「青森りんごシリーズ」の公式サイト→https://www.acure-fun.net/products/apple/
販売終了かー
そっかそっか…。
公式サイトをみてわかったこと
- 「王林」と「つがる」は販売終了(ネットショップでは販売中)
- チャートにあった「きおう」は、旧シリーズのもの
- 「世界一」は数量限定販売
- 「青森りんご」というおおきな商品名のものも存在する
(「世界一」って、300円もするジュースだからって最終手段みたいな名前つけたなぁ、と思ったけどちゃんとしたリンゴの品種名だった。ごめんごめん)
というわけで。
私が四ツ谷駅で収穫できると思い歩き回った「きおう」「つがる」「王林」はすでに入手不可能。代わりに、数量限定で「世界一」があり、その他に「青森りんご」というのも存在する、
ということがわかりました。
「世界一」を求めて
ここまで来たからには、もう、あいつを狩るしかない。
「世界一」を…!
ということで、やってきました東京駅(限定の自販機は上野駅と東京駅に設置)。
東京駅。
そう、すぐそばにはやんごとなき方が住むあの広い場所がある。
やんごとなき方々が電車を降りて一息つく時、ふさわしいのは300円のリンゴジュースであるべきなのだ。
私ですか?私はやんごとなくない、ふつうの人。
でもいいの、今日はヘビーな不毛な議論をがんばったから!!
ええと…(きょろきょろ)
改札外の…コンコースの…(きょろきょろ)
…ん?
なにあの行列。
ま、まさか…
まさかね…??
うわーー!!
自販機に行列が!!!
これにはびっくりするとともに、笑ってしまった。
笑っているうちにもどんどん、列が伸びていく。
なんだよー、ぜんぜん「隠れた名品」じゃないじゃん、めちゃくちゃ大人気じゃん!!
でも知ってたんだ、私。
この日お昼を食べながらスマホをいじっていたら、また別の、この自販機が取り上げられている記事を発見してしまっていたから。
「またやられた…」って、記事も読まずスクショも撮らず天を仰いでしまったのだった。
ネットのチカラは偉大だわ…。
もう、悔しいから絶対絶対、今日のうちに記事にする!!
って、並びました。
並んでいたら通りすがりの女性に話しかけられました。
女性:これって今日までですか?
私:いえ、期間限定みたいですよ。
女性:じゃあ今日じゃなくてもいいわね~
私:あっでも、数量限定のジュースもあるみたいですよ!
あれ、私、なんで関係者みたいに説明しちゃってるんだろう…たしかに心は「あちら寄り」になってるかも。
まだ見ぬリンゴジュースを追いかけて、ここ数週間あちこち歩き回ってたもんな…。
でもさ、数量限定のリンゴだなんて気にな…
ん?
そうだった、しまった!!
数量限定なんだ!!
あわてて前方の自販機を確認する私。
「世界一」、売り切れてるーー!!
ーーー
ーー
ー
…
青い鳥
意気消沈して帰宅した私の目に飛び込んできたのは
同居人の実家から送られてきたリンゴでした!
品種はわからないけれど、北海道余市(よいち)町のリンゴですって。
もうこれが「わたしにとっての世界一」ってことで、いいですよね!!
すっぱいブドウ、ならぬ すっぱいリンゴとなりましたとさ。
おわり