(新しい)置き場

ごそごそしています

ちょっとしたパーティまでの20日間

「ちょっとしたパーティ」。

その名はよく聞くけれど、いったいどこで開催されているのか?そもそも、そんなものは本当に開催されているのか?
都市伝説にも近い「ちょっとしたパーティ」。
ちょっとしたもなにも、我々庶民は、知人の結婚式くらいしか「パーティ」なんて知らない。

しかし!!

ここに報告します、
みんなー!ちょっとしたパーティは実在したぞーー!!



突然の招待

仕事をした。
普段の業務からは一歩外れた、正直、とても面倒で、気が重くて、なんで私がやんなきゃいけないんだよ…という類のものだった。
年度末でただでさえばたばたと忙しい日々に、その余計な仕事のための準備がプラスされて。
仕方なく私としては本当に、本当に珍しく、家に持ち帰って準備を進めたりした。同居人を相手にプレゼンの練習さえした。
ああ、なんてことだ!これじゃあまるで仕事熱心な人みたいじゃないか!!

それでもなんとかその仕事を終え、いい評価も悪い評価もなく、その仕事は完結し、過ぎ去っていった。
はずだった。

それから何日か経って、一通のメールが届いた。
誰だっけこの名前。。あ、この前の仕事でお会いしたCさんだ。
そこには、パーティに招待します、招待状送りますね、とあった。

え、ええ??

そして、本当に招待状が届いたのだ。

f:id:miyanishinoaya:20200201181049j:plain


パーティまであと20日:招待状が届く

f:id:miyanishinoaya:20200201181105j:plain


わーーーー!!
ちゃんとしたやつじゃん!!
「ちょっとした」どころじゃないじゃん!!


なんか…
仕事、がんばってよかったな…って、思った。ガラにもなく。

これは、なんでもないフツーのアラサーが突然招待されたパーティに参加するまでの20日間の記録である。




パーティに招待されたらまず最初にすべきこと

ところで、私がまず最初にしたことってなんだかわかりますか?
衣装の調達?美容室の予約?
…いいえ、もっと大切なこと。


答え:勤務シフトの調整

そう、我々働く大人は、まず仕事をなんとかせねばならないのだ!


パーティまであと19日:当日のシフトを調整する

私はシフト制の仕事をしている。そのパーティの日は遅番の予定だった。
パーティ開始は18時。早番と交代してもらっても間に合わない。
私が抜けると遅番の人数が足りなくなるので、早番の人と交代してもらった上で、さらに半休を取るという荒業を使った。ごめんな、職場のみんな…!でも私は万難排してこのパーティに向かわなければいけないの、なぜならメールで「万難排して駆けつけます」と返事してしまったから…!!(律儀…!)


パーティまであと18日:着ていく服、アクセサリーと靴

えー、なに着てこう。
スーツなら無難だろうけど、せっかくパーティだしな。結婚式じゃないんだからつるつるのドレスじゃ大げさすぎるだろうし、
でも、ちょうどいいドレスアップをしてみたい。
そうだ、完成したばかりの、洋裁が趣味の母が作ってくれた紺のワンピースがあるんだった。あれにパールのネックレスなら、まあまあきれいめに仕上がるだろう。よし、そうしよう。

ネックレス以外のアクセサリーはどうしようか。。
華やかな場にふさわしい装いというのが恐らく存在して、そこにはなにがしかのアクセサリーも関係してくるのであろう。アラサー非正規雇用の私が雑誌で時々特集を組まれるような「自分ご褒美アクセサリー」なんて持っているわけないのだけれど、、、
しかし!なんと今わたしの手元には、めずらしくすてきな指輪があるのであった。その名も婚約指輪!!(じゃじゃーん!わーわー!)
むしろ「婚約指輪、もらったけど着けるタイミング意外とない問題」を回避することができた。やったね!

着るものは決まったけど、それに合わせる靴も悩みどころだ。
細いヒールのエナメルの靴は持ってる、しかし長時間の着用には私の足が耐えられない。機動力の落ちる靴というのは私にとって致命的なのだ。足が痛いと機嫌が悪くなるし、頭だって痛くなる。
あきらめて、きちんとした仕事のときに履く太めヒールの革靴にする。パーティ感は薄れるけど仕方ない。逆に、「それほど浮かれていませんよ」感を出すための小道具として機能してもらおう。まさに「地に足がついている」感、を、演出。


…なんかねー、浮かれてるのがばれちゃうの照れくさいじゃないですか!!
えへへ、そわそわ。


パーティまであと11日:美容室へ行く

美容室を予約。これは今回特別ってわけじゃなくて、定期的に切りに行っているやつだ(と、ここでもみずから浮かれ抑制力を働かせる私)。
馴染みの美容師さんだったので「実は!パーティに招待されたんです!!」って話しちゃおっかな、どうしよっかなうふふと思っていたのだけど、結局はその美容師さんが独立してお店を出すという話で盛り上がった。


パーティまであと8日:バッグを予約

バッグなー。
冠婚葬祭用の黒いハンドバッグは持っている。冠婚と葬祭のどっちでも使える、無難なやつだ。
でも!!今回はパーーティーーだよ!ちょっと特別な感じにしたいじゃん?!
うっかり浮かれたいじゃん?!着飾りたいじゃん?!?!たまには!!

でも、結婚式に呼ばれることは減り、お弔いのほうが増えてくるお年頃だ。今回のためにパーティバッグを購入するのもアレだな…むむむ…

ということで、レンタル。
どれにしようか、さんざん悩んだ。小さければ小さいほどパーティ感が増す、けれども荷物が全っ然入らない。ここでも靴と同様、「それほど浮かれていませんよ」感を出す必要があるし(ない)、でもせっかくだから素敵なバッグを持ってみたい…!
結局、白いレースで、やや大きめのものをチョイス。靴が黒だからバッグも黒がよかろうとは考えたのだけど、
でも、でも、「白いレースのバッグ」を持ってみたかったんだよ…!
こんなところで自分の中の「装いへのあこがれ」と対面することになるなんてね。


パーティまであと3日:フェイスシェービングにいく

顔の産毛を剃ってもらい、襟足を整え、ついでに眉毛も整えてもらう。
ここには時々来ている。大体、結婚式参列か、ここぞという仕事の前に。つまり、私にとってここに来ることは、「ちょっとでもきれいめになろうとしている」証。
私は美醜以前に、そもそも自分の容姿に興味を持つことに対して、ずっと苦手意識があった。だから、こういうところにこれるようになった自分のことを、ちょっとだけ感慨深く思う。


パーティ前日:爪と肌の手入れ(のはずだった)

爪と肌の手入れは、前日夜にしよう。当日でも日中は仕事だから、派手なネイルはできないし。ベースを整えて、薄い色でも塗りましょうかしらね〜

と思っていたのだが、前日はまさかの寝落ち。
うおー、化粧落とさないで寝たから顔、べったべたじゃん!!爪、裸爪じゃん!!

はー、でもまずは仕事行かなきゃ…!



いよいよ当日

気もそぞろに仕事を終わらせて半休で帰宅。

サポート強めのストッキングを履く。
ワンピースに着替える。
パールのネックレスと、婚約指輪。
そうだ、パールのイヤリングは友達の結婚式で片方無くしたままだった。アクセサリーフル装備も恥ずかしいからいっか。
レンタルで届いた箱から白いレースのバッグを出して、招待状やスマホ、お財布、ハンカチ、リップクリームなどを放り込む。
コートを着る寒さじゃないけど、なんとなくワンピースのままだと心配…浮かれが目立つというか、防御力が落ちるというか。でも、荷物は極力減らしたいという気持ちの勝ち。コートなしで家を出た。

ヘアメイクをお願いしたお店までは20分くらい。
できるだけドレスアップしているくせに、全身のうち、髪型だけが「素」なのって、ちょっと笑ってしまう。頭だけが未完成というバランスの悪さ。

お店ではスタッフさんが「何のパーティですか?」と水を向けてくる。
○○賞の授賞式です!と言ったら私が受賞する人かと勘違いされてしまうんじゃないかという完全に余計な考えで、「仕事関係のパーティで…」と濁した。言っておくが、今までに私の仕事で開催されたパーティ類なんて一切ない。でもまぁ、今日のは仕事で出会った人に招待してもらったパーティ、だから、要約して仕事関係のパーティ、で、嘘ではないよな。

でも、結局不安を吐露してしまった。
会社関係のパーティなんですけど、私ひとり参加で知り合いがいないので不安なんです…。
どれくらいの規模なのか正直、わからないので、服装とか浮いてないか心配で…。

そう、知ってた。私、浮かれてるだけじゃなくて、本当はめちゃくちゃ不安なのだった。

仕事で必ず出席しなければいけないパーティってわけでは、ない。
それなのに、身支度のために出費して、めちゃくちゃ不安な思いまでして、なんでこのパーティに参加するのか。

今回招待されたのは、演劇界での大きな賞の授賞式。
私は若い頃、演劇をやっていた。

やっていた、と大きな声で言えるような実績もないのだけれど、
でも、養成所に通い、1年間めちゃくちゃに濃い時間を過ごし、卒業後も自分なりにあれこれがんばっていた。
そんな私が、はるか遠く演劇から離れ、幾星霜。
まさか、こんなご縁があるなんて。人生、まじでなにが起きるかわかんない。

こんなことになるなんて、あのころの私が知ったらびっくりするだろうな。
でも、完全な部外者としての参加だから、別に喜びはしないかな…。受賞するわけじゃないしな…。
でもでも、なんとなく、これはきちんと参加したいなと思ったんだ。
人生ずいぶん回り道して、迷い道して、それでもおもしろいことにたどり着いたぞって。
目指してたところとちょっと違うけど、それでもけっこう楽しんでるぞって。
私の人生のある時期の集大成として、どうしても出席したかった。



f:id:miyanishinoaya:20200201181302j:plain


パーティの最中はどうだったかって?

もう、壁の花もいいとこですよ。
一切、なーんにもできなかった。誰にも話しかけることができなかった。
何なら、乾杯のテーブルにも加われなかった。
たった一人で、誰一人知っている人のいないパーティに参加するのは、わかってはいたけど私にとってはかなり厳しい戦いであった。
誰ともしゃべれない。誰にも話しかけられない。お料理だって取りにいけない。

でも実は、本当に居場所がなければ、途中で帰っちゃおって思ってもいた。
だけど、なんとか最後まで、居続けることができた。しかも約2時間半、私は誰にも話しかけられない自分のことを、嫌悪することなく落ち込むことなく、もぉー私ったら仕方ないな、相変わらずだなって許容できた。
もうそれだけで今回は十分。
今回招待してくれた人にご挨拶したし。人見知りの自分としては、よくがんばったな!とぎゅうぎゅうハグしてあげたいほどだ。

それにしても、喜びの現場に居合わせるのって、しみじみ幸福だ。
たくさんの演劇人たちが憧れ、一部の人しか手にすることのできないこの賞を手にした人と、それを祝う人たちのざわめきの、すみっこに居られたこと。
あの仕事、がんばってよかったな。
昔々、演劇に夢中だったひとりの女の子が、こんな風にこんなところにたどり着くとはね。いやはや、参ったね。




パーティ会場ではウーロン茶を1杯飲んだきりだった、その帰り道にコンビニへ。

f:id:miyanishinoaya:20200201181322j:plain



俺たちのパーティはこれからだぜ!!!!!