(新しい)置き場

ごそごそしています

ベビーカーを運べた私

今日あったことを書く。

仕事で外出先から帰るとき、駅構内の階段下にベビーカーと女性を見つけた。
周りにエレベーターもエスカレーターもない場所だ。辺りに人もいない。明らかに困っている様子だ。
私はその20段ほどの階段を降りるところだったので、降りつつ「お手伝いしますよ」と声をかけた。

女性は顔を上げて言った。「ありがとうございます、でも大丈夫です。駅員さんを呼ぼうと思っていたので…」
「あ、じゃあ探してきますね」と言い、今降りてきた階段を駆け上がる私。

…しかし、このあたりには駅員さんが居そうなところはないのだった。改札からはだいぶ離れているし、今だって乗り換えでてくてく歩いてきたけれど、一人も目にしなかったじゃないか。なにをしてるんだ私は。あの女性は私に迷惑をかけまいとして、遠慮して「駅員さんを」と言ってくれたのだ。なにを真に受けたんだ!戻れ私!
こういうとき、私は本当に気が利かない。

すぐに二人の元に戻る私。
「駅員さん見当たらなくて、でも私お手伝いします!赤ちゃん抱っこしていただければベビーカー運びますんで!」
「すいません、ありがとうございます」

手伝うと言ったものの、ベビーカーってどこ持って運べばいいんだ?持ったことないよ。
赤ちゃんを抱き上げた女性に、正直に聞く。「こう持てば、いいですか?」ベビーカーを横から、右手でハンドルを、左手で座面の端を掴んで持ち上げる。おお、思ったより軽い。畳んだりしないでこのまま運べそうだ。

階段の上でベビーカーを下ろす。ありがとうございました、助かりました、と女性。再びベビーカーに収まった赤ちゃんはにっこにこしている。慣れている人ならここで、ちょっと赤ちゃんをあやしたりするんだろうな。しかしながら、私にはその技術はない。女性に、じゃあお気をつけて、と声をかけて再び階段を降りた。

おお。私、手伝えたじゃん。困っているママと赤ちゃんを。

こんな場面では、手伝うのは当然だと人は言うだろう。
私だってそう思ってはいたよ。
でも実際に手伝ったことはなかったんだ。手伝いかたがわかんなかったんだよな。
だって、ベビーカーを扱ったことがない。子育ての経験がない。どうしていいのかわからない。いい歳して恥ずかしいが、事実だ。

あ、ちょっと違うな。
「階段でベビーカーを運ぶ手伝い」って、ママと一緒に「せーの」でベビーカーを持ち上げてあげる、だと、思っていたんだった。うん、そうだった。そう思っていた。で、運んでるときにガツっとか階段にぶつけたりつまづいたりして、そのせいでベビーカーを落としちゃったりして、赤ちゃん大怪我なんてことになったら逆に申し訳ないじゃん!申し訳ないじゃ済まないじゃん!!って、思ってたんだった。

でも、どうやらそうじゃないらしいって知ったんだった。どこでだったかな、どこかの駅で、駅員さんがベビーカーを運ぶ場面に通りすがったんだ。
そのとき駅員さんが、こう言ってた。「赤ちゃん抱っこしていただければ、私がベビーカーを上まで運びますので」って。

そうなのか!!
そうやって「運ぶ」のか!!!
エウレーカ!!!

無知だと笑うが良い。でも本当に、目から鱗がぼとぼと落ちた。

そしてそれを今日、やっと実践できたのであった。
なんだよー、手伝うって簡単じゃんー


なんて。
ほんのちょっと運んだくらいで何を偉そうに、と、思われても仕方ない程度の些細なことだろうけど。
それに、今回はたまたま、シンプルだっただけで、
女性が両手にいっぱい荷物を持っていたら?とか
逆に私のほうが、両手にいっぱい荷物を持っていたら?とか
赤ちゃんが双子ちゃんだったら?とか
手伝うのを頑なに拒否されたら?とか
赤ちゃんがギャン泣きしてたら?とか
どうすればいいのかわからないパターンはいっぱいあるんだと思うよ。そんなときも、今日と同じようになんの躊躇もなく声を掛けられるか、わからないけど。

でもさー、ひとまず、今日ちょっとだけでも手伝えたことは、自分にも嬉しいことだったんだよ!!
こんな私でもベビーカーを運べたよ!!

で、思ったんだよ。もしかして私みたいに、手伝いかたがわかんなくて手伝えてない人、いるんじゃないか?って。
いや、私が無知すぎただけか?想像力があれば私みたいに勘違いしなくて済んでるか?うん、そうかもしれないな。

でも、もしかしたらのために書いておく。
シーンごとに求められてる助けは違うだろうけど、
「赤ちゃん抱っこしていただければ、私がベビーカーを運びますよ」
もしかしたら、この言葉で、出来ることがあるかもしれないし、喜んでくれる人がいるかもしれない。