2018年12月28日、仕事納めの夜。
私はバーコードを模写していた。
一体どうしたことなのか。
みんな大好きデイリーポータルZの年末年始企画のうちの「ひまつぶしタスクリスト」に参加しようと思ったのだ。
バーコードなんて、ペンと紙があれば簡単に書けるし☆
って、気軽に始めたことを私はわりと早いうちに後悔することになる。
気軽にお題を決める
その日の夜ご飯は、レトルトの松本楼チキンカレーだった(『10円じゃない10円カレーを食べてきた』の時にもらったお土産だよ!)。
お、バーコードあるね。よし、これにしよう。
本体であるチキンカレーを完食。レトルトだけど具がしっかり入っていて美味しかったです。
よし始めるぞ〜
さて、ひとつめ。
そこらへんにあったレシートの裏に、そこらへんにあったボールペンと定規で書き始める。
じっくりバーコードを眺めたことなかったけど、線の太さがいろいろあるんだね。この組み合わせで数字になってるのかな。
えーと、細いのが2本。その次ちょっと太いのが2本で…
ううむ、目がちらちらするな。どこまで書いたっけ…
と、書き上げたのがこちら。
うん、バーコードっぽく、けっこう上手に書けた感じがするよ!
バーコード読み取りアプリを起動したスマホをわくわくしながらかざす。
…無反応。
ええーっ!
無反応!
せめて「読み取れません」とか何とか言ってよー
ま、最初っから読めちゃってもつまんないよね。
しかもレシートの裏だし!透けちゃって読み取りのジャマをしたのかもしれない。
インクのダマも、読み取れなかった原因かも。
2つめから本気出す
ということで次は少し厚手のいい紙に書く。
ボールペンも変えた。
定規は他に持っていないので、これで続行。
頼むぞ、ジェットストリーム!
ふたつめ。
無反応。
以下、省略
3つめも4つめも5つめも、
ことごとく無反応。えー。
バーの長さがガタガタなのがダメなのかな?いや、そんなことはないはず。だって私の大好物・じゃがりこのバーコートでもちゃんと機能してるじゃないか!
と、6つめも7つめもやっつめも書いたけど、やはり無反応。
格闘2時間弱
長さがガタガタのせいで”本気のバーコード”に成りきれてないのかな?と思い、用紙変更。
罫線があるからバーの長さを揃えて書きやすいし、今度こそ大丈夫…!
9こめ。
無反応。
まー読まない読まない。読みゃあしない!!
アプリの不具合かな?って思ったよ。思いたかったよ。でも本物のバーコードは、ちゃんと読むんだよ。きー!
アプリの気持ちになる
視点を変えてみよう。
私がバーコード読み取りアプリだったらどう思う?
そうだな…
余計な線は無いほうがいいな。
あと、太さの強弱ははっきりしていてほしい。濃淡のブレも無いほうがいいな。
バーの長さはバラバラでもいいけど、できればキレイに揃ってるほうが読み取ろう!って気持ちになるな…
なるほど、罫線がある紙じゃダメなんだ!
でも無地の紙が見当たらないから…薄い水色の方眼用紙でどうだ!コピーに写りにくいって書いてあるし!
黒ではなくて、白か?
あらためて、お手本のバーコードをじっくり見てみる。
黒いバーの太さのバリエーション、よく見るとそんなに多くないんだな…。
あれ、もしかしてこれ、黒いバーのほうじゃなくて白、つまり余白のほうが重要って可能性もあるんじゃ…?
いやいや、「バーコード」って名前なんだからさ、さすがにバーを完全無視ってことはないんじゃないかな…でも余白も無視できない読み取り要素なのかも…なんかずっと見てたら白もバーに見えてきたし…
と書き上げた10こめから14こめ。変わらず無反応。ふはー
つらい…つらいよ…
こんな夜中になにをやってるんだ私は…仕事納めで冬休みに入ったんじゃなかったのか…?!
ひとつめでの成功はないだろうとは思ってたけど、なんで全く、まっっったく読み取らないんだよ…!
しかもアプリの仕様なのだから仕方ないのだけど、エラーであることをなんにも表してくれない。「読みとれません」とか「不正なコードです」とか「これはバーコードですか?」とか、なんとか言ってくれよ!
いくらかざしても、虚無しか訪れないのがこんなに辛いなんて…!
アプリの気持ちになる、再び
もういちど、アプリの気持ちになるんだ私!
バーコードを読みとるとき、何が一番嫌だ?
「…余計な線は無いほうがいい…」
そうだよな、よし、やっぱり無地の紙だ!そして白黒をはっきり書くぞ!
(と宣言したものの、普通の紙がなくてチラシの裏を使用)
15こめから19こめ。
線の太さと余白のバランスにも注意した。
インクがかすれないようにゆっくりと、筆圧にも気をつけた。
黒い部分は鮮やかに黒く。
白い部分は穢れのない白に。
それはまるで、写経のようでもあった。
しかしそのたびに待ち受けていたのは、虚無。
線の乱れは、心の乱れ、か…。
時、来たる
もう、目も手も疲れてきた。
できるだけまっすぐに、長さを揃えて書きたいと思っていたけれど、集中力が失せて全然キレイに書けない。
時間は夜中の2時を過ぎた。
紙の余白もこれで最後だ。
次はどんな紙に書けばいいんだろう、というかこの部屋にはロクな紙がないな。紙ゴミの日用にまとめてある束から使えそうなものを探すか…
20こめの手書きバーコードに、よろよろとスマホをかざす。
その時はついに訪れた…!!
ム゛ーっ(スマホのバイブレーション)
はっ…!
や、やったーーーーー!!
ついに、ついに読み取ったぞーーー!!(数字違うけど!)
うわはーーーーい!!(数字違うけど!)
嬉しくて何度も確かめる。
スマホをかざすたびに、「ム゛ーっ」「ム゛ーっ」
ああ、幻ではない、認識されている!!
喜びと衝撃を表すマークつきで書いた20の文字。改めて数えたら本当は21こめだった手書きバーコード。
わかってる、全然、レトルトの松本楼チキンカレーを表す番号ではない。全然ちがう。
でも、2時間弱の激闘の末、私はついにここまでたどり着いたのだ!!
私は今、バーコード認識アプリを超えた…!
この結果を「ひまつぶしタスクリスト」に投稿。長い戦いは幕を下ろしたのであった。
下ろしたはずだった。
やっぱり終わらない戦い
さて。
バーコード模写は、言ってみれば勘でなんとか乗り切った。しかし正しい読み取りではなかった。
では、正しく読み取ってもらうにはどうすべきだったのか。
ということでバーコードについて検索してみたところ、
毎日新聞の『図解で納得 バーコードの仕組み』というページがみつかった。
なになに…(各自リンク先をご確認ください)
ほらー、やっぱり白いところも重要だって書いてあるじゃんー!
バーにも、白いところにも、太さの比率があるって!なるほどね〜
以上を踏まえた上で、いざ!!
かなり横長になっちゃったけど、バーコード完成!
方眼を使って比率に気をつけながら書いたので、もうこれはもうほぼ本物のバーコードであると言っていいのではないだろうか。オールモストバーコード。
ついに、この戦いに勝つ時が来た…!
はやる心を抑え、床に置いたオールモストバーコードにスマホをかざす。
…。
無 反 応
駄目か…。
やはり人間の手には負えぬものなのか…。
こうして我々の仕事はAIに奪われてしまうのか…。
いや、ここであきらめてはならぬ!
人間と機械と、手を取り合って築く未来というものもあるはずなんだ!!
機械(コピー機)の力を借りて、再度挑戦。
切り貼りして、長さのバランスを調整(まっすぐ折れてない・テープでの留め方が雑なので紙が浮いている、等々は見えないふりをしてください)。
正しい比率?知らんよ!もうずっと見つめてきたバーコードなんだ、バーコードとしての黄金比は私の勘に任せる!!
さあ、人間と機械が共生する未来を、信じさせてくれ…!!
…スマホが反応することは永遠に、無かった。
こうして人類はバーコードとの戦いに敗れ去ったのであった。
もう、バーコード作成はプロに任せようぜ!!
― 完 ―
追記:アプリをアップデートしたら20こめも読めなくなりました。完敗〜