(新しい)置き場

ごそごそしています

ホラー映画とものさし

月に一度は、映画館で映画を見るようにしている。

2018年12月は「ボヘミアン・ラプソディー」をすでに見ていたが、
もう一本、「来る」という映画を見ることにした。

しかし困ったことに、その映画のジャンルは「ホラー」だという。
ホラー映画なんて、自分では絶対に選ばない。絶っっ対に、だ。

でも「ホラーが苦手でも楽しめた」という噂が気になってしまったので見に行った。
(よりによってなぜこれを?ということについては「ラジオ好きなので」というヒントのみを置いておく。)

前半、「いわゆるホラー映像」ではないのに、うわーこういうの苦手だな、といういくつかのシーンを耐えながら見た。
途中から、主人公の代替わり?のシステムに、へぇこういう作りなんだ、と思った。
以降、
黒木華ちゃんかわいいなぁ〜
えっ、これ岡田准一??
これが噂の柴田理恵!!
おっ伊集院さんやっと出てきた〜
はー松たか子つえー
っていうかホラーとコメディって紙一重だな…

という感想。
我ながら酷いな。ひっどいな。でも本当にこんな気持ちだった。

自分がホラー映画というものを見慣れていないからなのか、
処理しきれない感情や思考が、宙ぶらりんだった。


ところで。
宇多丸という人がいる。

私にとっての宇多丸氏は、めちゃくちゃ映画に詳しいラジオの人、という認識が先だったので今でもそう思っているが、本当はミュージシャンだ。もしご存知なければ各自検索してください。

で、この人はかなり前から毎週、見た映画についてラジオで語っている。

今回の「来る」という映画についても、宇多丸氏が語っていたので聴いてみた。
すると、
私が見て感じた、言葉にできない感情や感想のかたまりを、宇多丸氏が解きほぐして言葉にしていたのだ。
それを受け、私は「ああ、私が感じたことってそれだったんだ」、と、宇多丸氏を介して自分の感情を理解することができた。
なぜあんな場面があったのか。なぜあの表現だったのか。どんな意味を含んでいたのか。
もちろん宇多丸氏は監督ではないから、100パーセントの正解ではないだろうけれど。そもそも、映画に正解なんてないのだろうけれど、
それにしたって、私が言葉にできなかった「うわーこういうの苦手だな」、の
何を「こういうの」と感じ、
なぜ「苦手だな」と感じたのかを、的確に示してくれた。

宇多丸氏の批評によって自分の思考が整理されたのだ。
うおお、これが「教養」のちからなのか!

そうなんだよ、「教養」。

今回に限らず、宇多丸氏はずっと、私の知らなかった映画の見方、考え方、楽しみ方を語っていた。
盲目的に大絶賛することもなく、圧倒的に貶すこともなく、解剖しながらの解説、指摘。
そこには宇多丸氏の、映画の教養や知識に裏打ちされた確かなものさしがあって、それによって的確に計測され、表わされている。
「教養」とは「ものさし」なんだと、私はこの度思い知らされた。

映画に限らない。
文学作品、芸術、哲学や思想、スポーツ、ゲーム。そのほか、たくさんのこと。
教養や知識があれば、それがものさしとなる。
知識や教養があれば、世界の解像度が上がる。
この世界をしっかり見るために、しっかり楽しむためには教養や知識があるといいんだな。
私はやっとそういうことに気がついた。
今更?
もういい歳なのにやっと?
おう、わかってるとも。それでも気づいてよかったよ。

私も世界と向き合うためのものさしを手に入れよう。