空港でしなくていいことをわざわざ空港でしよう。
今回のテーマはこれだ。
これだった。
9月の初め、土曜。17時半まで仕事をしていた。
帰省していた友人が飛行機で帰ってくる。成田空港到着時刻は20時過ぎとのこと。
よし、お迎えも兼ねて、しなくていいことをしに行ってやろうじゃないか、成田空港へ!!
あやしい雲行き
東京駅から飛び乗ったのは18時10分発、成田空港直行のバス。
乗った直後に突然の土砂降り。最初、まさか雨の音とは思わないほどの激しい降り方だった。
この雨が私の計画の行く末を暗示しているとは知る由もなかった。
プラン発表
19時15分、成田空港第2ターミナルに到着。
ちなみに今回のプランはこちらである。
1.ボディケアサロンに行き、ドルで払う
2.名刺を作る
3.礼拝室に入る
友人を乗せた飛行機は20時5分着予定。それまでにこの3つのミッションをこなさなければいけない。
残念だけど、今日は大好きな空港をゆっくり堪能する余裕はない。行くぞ!
1.ボディケアサロンに行き、ドルで払う
最初に向かったのは、外貨両替である。
下調べのために成田空港のサイトを見ていたら、ボディケアという文字が目に入った。
「ドル払いもできます」と書いてある。
これだ!
ちょっとした空き時間で体をほぐしてもらおうというのは意外なことではないだろう、しかしわざわざドルで払う、これはかなりいい「わざわざ」具合なのでないか。
そう思い立ったが、あいにく手元にはドルがない。
しかし!ドルはなくてもユーロがあった。
ということで、
ユーロを
ドルに!
50ユーロが一旦日本円になり(そういう決まりなのだそうだ)、それから55ドルと14円になって手元に戻ってきた。
あれ、わざわざユーロを出さなくても、円からドルへの両替でよかったのか?
計算が壊滅的に苦手なので、損得についてはわからない。ただ、10年近く前の旅行からそのままになっていたユーロに日の目を見せてやりたかったのだ。どうか、損得については触れないでおいていただきたい。(損していたらショックなので。)
店舗へ向かうが…
外貨両替の列が予想以上だったので、時間的に厳しい。ドルを握りしめてボディケアサロンへ急ぐ。
受付は19時半までのはずだ。
廊下のデジタル時計は19時半の数分前を示している。よし、間に合う!
開いた扉から入店し、「いいですか?」と尋ねた私に非情の答えが。
「申し訳ありません、今日はもう終了なんです…」
えええーっ
だってすぐそこのデジタル時計ではまだ19時半になってないですよー?
最終受付19時半ってネットに書いてあったんですけど??
という言葉は全て飲み込んだ。
代わりに出たのは「あ、そうなんですかー、じゃあまた来ます…」。
わかる、わかるよ…今日はもうお客さん来なそうだもんね、と数分早めにレジ閉めを始めてしまう気持ち。
ここで「えっと、受付終了時間って何時でしたっけ?まだ3分ありますよね??」と言われても気まずくなるし困っちゃうよね、私も迷惑な客と思われたくないし、そもそもドルで支払おうとしていた面倒な客だったんだし…。
あるいは、ネットのは古い情報で、今は19時15分受付終了なのかもしれないし!
お店の中の時計は3分進んでいたのかもしれないし!
そうだ、きっとそうだったんだ…!!
お店の写真は撮りましたが、代わりに近くの通路にあった素敵なポストをご覧ください。
航空会社の名前のポスト。
なんでこんな通路にあるのか、なんのためのポストなのかは不明。
2.名刺を作る
さて、気を取り直して
次のしなくていいことをしに向かおう。
名刺作成。
これも、仕事で飛行機移動をしている人には便利なサービスなのだろう。うっかり切らしてしまいそうでも空港で名刺が作れる!
しかし私は今日、飛行機には乗らないし、名刺も足りなくない。
わざわざ空港で作る必要ないじゃん!
でも「わざわざ」作っちゃうぞー!
やってきたのは「T.E.I.ラウンジ」という有料のラウンジ。クレジットカードの会員が使えたり、そうじゃなくてもお金を払えば使える、フライト待ちの時間を過ごすことのできる場所だ。新聞や雑誌、ドリンクもあるし、コピーサービスも。ビジネス利用を見込んでいるらしく感じる。
その中にある「名刺作成サービス」。
私はジーンズにコンバースという、およそビジネスらしからぬ服装であったが、受付の女性に声を掛けた。
私「すいません、名刺をつくりたいんですけど…」
受付の女性「かしこまりました、サンプルはお持ちですか?」
サンプルとは、恐らく「今使っている名刺」のことであろう。普通、今使っている名刺が足りなくなりそうだから追加で作っておこう、という利用だろうしね。
私は今使っているものと同じものを作ってもつまらないと思い、サンプルは持っていないと答えた。すると
受付の女性「そうですか…そうしますと、ただいま大変込み合っておりますので、40分から50分ほど、もしかすると1時間以上お時間を頂戴するかもしれません…。」
現在ラウンジではスタッフさんが一人しかおらず、通常業務に加えて名刺作成を行うため、どれくらい時間がかかるかわからない、ということだった。ちなみに最低枚数は50枚とのこと。
友人の到着予定時刻は20時5分、現在19時35分。間に合わない。
時計をじっと見る私に、受付の女性は「何時のフライトのご予定ですか?」と尋ねる。
親切にきいてくださったのに、ごめんなさい…フライトの予定はないのです…フライたらないのです…。
私の単なる道楽のためにこのスタッフさんの手を煩わせるのは申し訳ないし、正直、名刺50枚もいらないので、撤退することにした。
空港で作る名刺だなんて、飛行機模様とかあるのかなーなんていう軽い気持ちで行って反省。(で、実際飛行機模様の名刺はあるのでしょうか)
3.礼拝室に入る
さて、気を取り直して
最後のしなくていいことをしに向かおう。
礼拝室。
数年前からこのような部屋が、空港や百貨店などに設置され始めたことは知っていた。
でも、近寄れない場所だと思っていた。
礼拝、ですよ。
信仰を持たない私なんかが行ってはいけない神聖な場所でしょ。
そう、神聖な場所である。
しかし成田空港のサイトにはこのように書かれていた。
『礼拝室は、祈り、祈祷、黙祷、瞑想、思索、物思いなど、静謐な環境の下での精神活動のためにどなたでもご利用いただけます。』
思索…!
物思い…!
どなたでも…!
もちろん、きちんとした目的で使用している人がいれば、邪魔をしないでそっと立ち去るつもり。
だから、ちょっとだけ覗かせて…!
そう思って立ち寄った礼拝室。
ひっそりと静かな場所にあるのかと思いきや、インフォメーションカウンターの真横が入口。付近は人の往来も多く、イメージとちょっと違ったけど、逆に、誰でもアクセスしやすい場所ということなのかもしれない。
ドアが開いていたのでチラっと覗かせてもらう。誰もいなかった。
入口すぐのところに「靴は脱いでください」の表示、そして水場。イスラム教でお祈りの前に手や顔を洗うと聞いたことがあるから、そのためのものだろう。(私が知らないだけで、他の宗教でも必要なのかもしれない)
その奥は、じゅうたんが敷かれた広い空間。
誰もいなかったし、「どなたでもご利用いただけます」と書かれてはいたけれど、やっぱり私のような部外者が興味本位で立ち入ってはいけないように思い、すぐにその場を後にした。
これで今回のテーマ『空港でしなくていいことをわざわざ空港でしよう』は終了である。
結論:わざわざ空港でしようと思っていた空港でしなくていいことは、ひとつも出来なかった
最後に、恥を忍んで告白しておきたいことがある。
下心の話だ。
実はもうひとつ、考えていた「わざわざ空港でしなくていいこと」があった。
0.宝くじを換金する
宝くじ売り場があり、購入も当選金の換金も出来るらしい。そういえば前に当たったスクラッチ、まだ持ってたな。
せっかくなら「購入」じゃなくて「換金」のほうが、より一層「わざわざ空港でしなくてもいい」感が強いと思った。
しかし、営業は17時までとのこと。
こちらは到着時刻19時過ぎの予定だ、完全に間に合わないじゃないか。
そうわかっていながらも、頭の中には「せっかく思いついたのな…」という未練もあった。
じゃあ、しれっと「換金しようと思ってたのに、営業時間外でした!てへっ☆」という感じで記事内に登場させちゃおうかな、という下心が生まれたのであった。ひとつくらい失敗したほうが記事のアクセントになるかな、と生意気にも思って。
そのために撮った写真がこちら。
換金するぞー!
と思ったのに時間外でした!てへっ☆
しかしこれがアクセントになるどころか、めでたく全ての企てが失敗に終わった。いっそすがすがしいほどである。
欲張るもんじゃないですね。
でも逆に、小細工しようとしたことへの罪悪感も晴れたので…
めでたしめでたし☆☆
【2019年8月、引越しとともに追記】2018年9月、自由ポータルに掲載していただきました(壊れたんじゃないかと思うほどアクセス数が伸びました)