(新しい)置き場

ごそごそしています

スイカを巡る冒険


6月下旬。
「マラソン大会、給水所ならぬ”給スイカ所”でスイカが振る舞われた」
という話題をニュースでご覧になった方、いらっしゃると思います。

それ、「富里スイカロードレース」っていう名前の大会だったんですけど、
私、参加してました。

気になった方も多いと思うので、どんな大会だったか、テレビでは紹介されなかった部分を報告します。
あと、マラソン大会ってどんな感じ?という方のためにマラソン大会基礎知識もお伝えします。


あ、わたし体育の成績、5段階評価でも10段階評価でも2だったので、大丈夫ですよ!




●抽選に当たらないと出られない

実はこの「富里スイカロードレース」に挑戦するのは、今年で2回目。
といっても1回目は昨年、エントリーしたものの抽選ではずれて参加できなかったのです。
抽選とは?出走するための権利を得るための抽選。
(申し込み先着順で受付という大会もあります)

「6年連続で落選しました、今年ついに当選!」と背中に貼って走っている人がいたので、2回目の応募で当選した私は運が良いほうだったようです。
東京マラソンの倍率が今年は○○倍」なんてその時期になるとニュースになりますが、あの抽選は東京マラソンの0次関門なんて呼ばれたりもしています。




●お金も払う

抽選に当たったからといって無料で走れるわけではなく、参加費が必要です。今回私の出た10キロの部は5千円でした。大会によって金額はまちまちですが、給水や給食、交通整理や会場確保など大会にかかわるあれこれを考えると参加費が必要で当然かと思います。

…と、今では思えるけど、体育の成績が2だった私が走ることを始める前には「辛い思いをして走るのに、さらにお金を払ってるなんて信じられない…!」という気持ちでした。まぁ、今でもそう感じることはあるけれど、それでも人は走るのです。




●大会の日は早起き

会場は千葉県富里市。東京在住の私は、4時半前に起床、5時過ぎには最寄の駅へ向かい、日暮里駅から京成本線に乗って、7時過ぎに京成成田駅に到着です。

気温が上がると走るのがキツくなるので、マラソンのスタートは朝早いのが普通です。
また、さまざまなシーンで行列ができるので、それを回避するためにも早く集まる人たちが多いです。
なお、今回はこの先

行列1:会場までのシャトルバス待ち
行列2:会場についてから、更衣室待ち
行列3:着替え終わってから、荷物預け待ち
行列4:トイレ待ち

という各種行列が予想されています。これに加え、大会によっては
行列1.5 受付待ち
という列ができることもあるそうです。これは当日、ナンバーカード(ゼッケンのこと)を受け取る列ですが、私は事前に送付されてくるタイプの大会にしか出たことがないので未経験です。

事前に「スイカロードレースはとにかく並ぶ!」と聞いていたので余裕を持って到着したのですが、それでも会場に向かうシャトルバスを待つ列はかなりの長さになっていました。雨に濡れながらバスへの乗車を待ちます。

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並んでいる間に撮った、成田市役所前の止まった時計。錆がすごい。


ちなみにこの後、マラソン大会で待ち受けがちな行列には

行列5:スタート待ち
行列6:ゴール後、荷物受け取り待ち
行列7:更衣室待ち
行列8:帰りのバス乗車待ち

などがありますが、今回の大会では行列5と行列8のみで、他はありませんでした。快適!



会場に到着

30分ほどバスに揺られて会場に到着。バスを降り、荷物預けの場所に向かいます。

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空に浮かぶのは…

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イカだ!!


●荷物はロッカーに預けない

今回はあらかじめ着替えてきていたので、シューズを履き替えるだけ。荷物は、100円で購入した専用の荷物袋に入れて預けます。

この荷物袋は事前にナンバーカードと一緒に参加者全員に送付されることが多いのですが、今回は現地での購入でした。参加者によっては近所から来るので手荷物がなかったり、応援の家族や仲間などに託したりと、確かに荷物預け不要の人もいますしね。
ちなみに預けられた荷物は、人力で体育館などに並べられ、終了後も人力で持ってきてくれます。感謝!




●スタートまでけっこう待つ

その後は準備運動をしたり、先に催される小学生や中学生の部を見送ったりしながら自分のスタート時間を待ちます。

ちなみに今回は、3キロ・5キロ・10キロの部合わせて募集人数が1万三千人。応援の人たちもふくめてかなりの人数が、スタート・ゴール地点に集まっています。
中学校や市の体育館などが集まっている場所が会場だったのですが、テントを持ち込んで専用の更衣室にしたり、ランニングチームでおそろいの衣装に着替えたりと、それぞれにくつろぎながら過ごしています。
雨でぬかるんだグラウンドや濡れた芝生のにおいなどがノスタルジーを誘います。体育の成績が2だったことも改めてよみがえってきます。
中学校1階には図工室がありました。図工室が1階っていうのは全ての学校に共通しているのでしょうか。




●よーいドンでスタートしない

スタート時間が近づいてきたので、スタート地点に向かいます。
私の位置からはこんな風に見えていました。

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遠くに見える黄色いのがスタートゲートです。

定刻に「よーい、ドン」でゲートから走り出すことができるのは、一部のエリートランナーのみ。
私のようなのんびりランナーは後ろのほうからスタートです。
先頭に陣取っても、スタート後、速い人たちの波に飲まれて痛い目を見るのは自分なので無理はしません。
(ナンバーカードの記号ごとに並ぶエリアが指定されている場合もあります)

ちなみに、私の周りにはスイカ柄の服を身に着けた人やスイカのコスプレの人などがたくさんいましたが、先頭のほうを走った友人曰く「周りにはコスプレなんて誰一人いなかった」とのこと。また、給スイカ所は素通りするランナーがほとんどだったそうです。スイカロードレースという名の大会に出走しておきながら給スイカ所に惑わされることなく、ベストタイムを目指すエリートランナー。天上人か。
(上位入賞者にはスイカが一玉賞品として授与されるので、実はそれを狙っていたのかも)

ともあれ、タイムを意識して走るランナーも体育の成績が2だったランナーも、同じコースをそれぞれのペースで走ることが許されているのです。誰も体育の成績が2だったことを咎める人はいません…!

こんな位置からなので「よーいドン」の定刻から遅れること4分。体育の成績が2だった私もスタートです。
(もっと参加者の多い大会では、スタートゲートをくぐるまで30分近くかかることもあります)




イカまで遠い

ところでテレビでは「給スイカ所」が大きく取り上げられていたと思いますが、
実際に給スイカ所があるのは、10キロのコースのうちの終盤、9キロのちょっと手前。それまでコース上にはスイカはありません。
つまり、我々はゴール近くのスイカを目指して走っているのです。

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今回走ったコース。緑のピンがスタートで、赤のピンがゴール。右上9キロのちょっと前の、グレーのピンのところが給スイカ所でした。

この日は雨模様で、降ったり止んだりしながらも急に晴れ間がのぞいたり。気温はそれほど高くないのですが、ゆっくりでも走っていれば当然、暑くなってきます。
こまめに給水所はありますが、やはり目指すはスイカです。スイカを巡る冒険です。




●給水はあんなにかっこよく取れない

テレビで見るマラソン大会では颯爽と給水を取るランナーの姿が映されますが、
私ぐらいのゆっくりランナーには、あんなことはできません。
まず、給水所が混み合っているため、立ち止まらないと紙コップが取れません。場合によっては、テーブルに紙コップ設置が間に合わず、空のコップを手にして水を入れてもらうのを待つこともあります(それだけ周りに人がいっぱいということですね。エリートランナーたちは速く、人数が少ないのでそれほど混まないのです)。

運良く水の入った紙コップを取れたとしても、走りながら飲むとむせます。
なので、私は紙コップを手にした後、他のランナーの邪魔にならない場所まで移動して、立ち止まって飲みます。これが体育の成績2の現実だ!




●応援は嬉しい

走っていると、地域の人が応援をしてくれます。
赤の他人である体育の成績が2だった私にも元気に声をかけてくれるおじさま、おばさま。
親に言われて恥ずかしそうに「がんばってくださーい」と呼びかけてくれる子どもたち。
グループホームから車椅子でわざわざ出てきてくれたらしい、おじいちゃんおばあちゃんたち。
お庭のホースでシャワーを降らせてくれるお宅。
意味もわからず呼び出されてきてる、犬。
この日は急に雨が強くなることもあって、「応援の人がたぶんそこに座っていたのであろう椅子」がいくつも放置されていて、それはそれで味わい深いものでした。

もしあなたが偶然マラソン大会に遭遇したら、知らない人でもちょっとでも応援してあげてください。それは本当に嬉しいことなのです。

このマラソンがなければ、千葉県の富里という場所を一生、知ることはなかったな。
こんな風に自分の足で走って、富里という場所の景色を見るなんて。
咲き乱れる花、広がる田園。
学校があり、倉庫があり、販売所があり、墓地がある。そこに確かにある、町の人たちの暮らし。
今日は大人数で押しかけちゃってごめんなさい、ちょっとお邪魔しますね。


そうこうしているうちに、やっと給スイカ所に到着だーーーーーー!!!!




イカまでまだ遠い

しかし給スイカ所のテントは大混雑。
テレビに映っていたのは、そこそこ速い人たちの場面です!体育の成績が2だった私がたどり着いたときにはテーブルにあるはずのスイカが見えないほどの人だかり…。

いくつかテーブルをやりすごし、やっと手にしたスイカ
このために、この長い道のりを走ってきたのだよ…!!

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実はスタート前は、「そうは言ったって、スイカ、でしょ?」なんて思っていた部分が本当は、ある。
一番好きな果物なに?と聞かれたって、スイカとは答えません。私にとってスイカは、それほど特別な果物ではありません。

しかし。
この給スイカ所で食べるスイカの甘さ!みずみずしさ!
こんなに染みるスイカ、今まであっただろうか…!
ありがとうスイカ、ありがとう富里。体育の成績が2だった私にも、こんなにおいしいスイカ
早起きして来た甲斐があったよ。あと1キロ、がんばれるよ。




そしてゴール

この後、立ちはだかる急な坂をなんとか走りきり(坂のふもとで墓のコスプレをした人に抜かされた)、
たくさんの人たちの声援を受けながらゴーーール。

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この後さらにスイカ提供所があり、ものすごい混雑の中全員がスイカを食べているというスイカタイムを楽しみ、記念のTシャツを受け取り、着替えて会場を後にしました。

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切っても切っても足りないスイカ

バスで近くの温泉に向かい、こちらもランナーで大混雑ではあったけれどさっぱりと汗を流してから帰京。

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夕焼けが綺麗でした。ありがとう富里!


体育の成績2でも走れたし、スイカはおいしかった!!

もしあなたがスイカロードレースに興味を持ったなら、体育の成績が2だった人でもちゃんと走れるんだなーと心を強く持ち、まずは抽選に当たるための運を良くするトレーニングから始めて来年の募集開始に備えてください!