(新しい)置き場

ごそごそしています

憧れのタクシーチケット

タクシーチケット。
最初にこの言葉を知ったのがいつのことだったのかは、もう思い出せない。
深夜ラジオから聞こえてきたのだろうか。
「撮影で遅くなって、タクシーチケットもらって帰ったんだけどさ」
「タクシーチケット運転手さんに渡すじゃん、」等々…

察するに、どうやら「タレントさんたち」が「仕事の関係」でもらったり、使ったりするらしい。
タクシーチケット。
それは私の中で実像を結ばないまま、使う人々も使用されるシーンも相まってなにか特別な、きらきらしたものとして膨らんでいった。

突如、そんなタクシーチケットと邂逅した。
ある撮影のお手伝いをする際、終了が深夜になるので
タクシーチケットを支給すると言うのだ。

「撮影」!「深夜」!
憧れのタクシーチケットとの対面に、これほどふさわしいシチュエーションがあるだろうか…!!

憧れのタクシーチケット。
魅惑の響き、タクシーチケット。
その実態とは…!!

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まさかのホチキス留め。

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モザイク箇所の解説
①発行元社名を表すと思われるアルファベット
②偽造防止のキラキラ
③クレジットカードの番号みたいな数字の羅列
④私にこれをくれた会社の名前(記入済で渡された)


大きさは、名刺ぐらい。材質は、紙。
複写式で2枚になっている。

こちらが2枚目。

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タクシーチケットについて、運転手さんから聞いた話。
・3万、5万、上限なしなど、いくつか種類がある。
・残業後の社員に会社が支給するなど、法人の利用が多い。(しかし以前よりは減っている)

そうか、私は正社員の経験が無いから知らなかっただけで
多くの人はきっと、タクシーチケットのこと知っているんだ…
タレントさんが使うものだなんて勘違いしてたのは私だけか…

などと落ち込むことはなかった。
なぜなら乗車して10分、この時点で車酔いとの戦いが始まっていたからだ。

しかも運転手さんから想定外の発言。
目的地まで、1万円では行けないかもしれないというのだ。

 

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…。
タクシーチケットが、無敵のきらきらカードからホチキス留めの紙へと姿を変えた瞬間だった。


タクシーは深夜の東京を走る。

途中、運転手さんは「カンナナ」や「オーメカイドー」を教えてくれる。
私は車を運転しないので、それらの道が具体的に、どこをどう通っているのかがわからない。
道路沿いに見えた東京メトロの駅の表示を指し、運転手さんは「メトロなんてマイナーで、わかんないよね」と言う。
私は毎日の通勤でメトロを使っているので、その駅名を見てああ、そろそろ家だなと思った。
そうか。運転手さんと私はこんなふうに、見えているものや、場所を認識する手段が違うんだな。

と考えることによって車酔いとの戦いを続けながら
ちょうど1時間で自宅に到着。

やはり1万円は超えてしまいました。
夢をありがとうタクシーチケット…